ごく当たり前のことだと私は考えています。

しかし世間では、これらがトレードオフ(相反するもの)だと思い込んでいる方も多いようです。

まずは、ミクロな現場視点から具体例をお話しします。


WBS/タイムチャートの組み方

リスクの高い作業は、必ず最初に着手します。
理由は単純で、万が一切り戻しが発生した場合、必要な所要時間を最短にできるからです。

さらに、初期フェーズの高リスクなアクションアイテムには、意図的に多めの時間バッファを積みます。
フェーズが進めば進むほど残る作業は低リスク化し、結果としてプロジェクト全体に“焦り”が減ります。
成功確率は自然と高まります。

リスク管理とは“後ろに押し込む”のではなく、最初に飲み込む設計です。


不正な経費の削減

ネットワークのメンテナンスを口実に、意味のない出張をする文化が残っている企業をよく見かけます。
これは直接的なコストの無駄であり、同時に組織モラルを腐らせるリスクでもあります。

実例1:FW設置のための不要な現地作業

  • 以前は、新顧客を獲得するたびに現地までFW(ファイアウォール)を設置しに行っていました。
  • しかし、顧客はすべて同じ建物に入居している「店子」のような存在でした。

改善策
→ 現地にはFWを1組だけ置き、以降はリモートでSVI(仮想インターフェース、いわば仮想FW)を増築するだけで済む設計に変更。

結果、出張費はゼロになりました。


実例2:パケットキャプチャのためだけの出張

  • ある企業では、パケットキャプチャのためだけに担当者が出張していました。

改善策
→ リモートデスクトップ+リモートSPAN(IPA用語でいう“ミラーポート”を遠隔地まで転送する仕組み)を構築し、リモートでキャプチャを実施。

移動コストも人件費も削減でき、担当者の精神的負荷も減る結果になりました。


機材購入の合理化

  • ベンダーに対し、「大口顧客の余りもので良いので、小口の在庫をストックしておいて欲しい」と依頼しました。

なぜか?

  • 一度に大量購入すると構築・設計のピークが重なり、一時的に人員を増やす必要が出るためです。
  • 逆に連続的な小口購入なら、現在の人員体制のままで対応できる確率が高まります。

これもキャッシュフロー・人件費・リスクのバランスを取る設計です。


リスクの踏み方にはコツがある

私はリスクをこう捉えています。

被害の影響度が予想可能なほど、その氷は厚い。
予想不可能なほど、その氷は薄い。

つまり、薄氷を渡るときは、あえて“最も厚い部分”を踏む。
リスクを無視するのではなく、予測できる範囲に集中し、未知の領域には踏み込まない。


結論

リスク低減とコスト削減は両立します。

むしろ、

  • リスクを先送りすることこそ、長期的にはコスト増大を招きます。
  • コスト削減だけを追えば、結果的に大きなリスクを生みます。

だから私は、最初に“薄氷の最も厚い場所”を踏み抜き、先に潰すべきリスクを潰す設計を選びます。
その結果として、コストは削減され、業務全体が軽くなります。


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